今回レビューするのは三上延『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』です。
鎌倉の片隅でひっそりと営業している古本屋さんのお話。
古本屋「ビブリア古書堂」にはお客からの古書に関わる様々な謎が持ち込まれる、
店長の篠川栞子はたちまちその謎を解き明かしてしまう。
ジャンルとしてはミステリーですが、殺人事件は出ない。
いわゆる「日常の謎」的なジャンルです。
作品情報
あらすじ
1年前に祖母を亡くした五浦大輔。
彼の祖母の遺品の中にあった『漱石全集』に、
見知らぬ名前と「夏目漱石」のサインと思われるものが見つかった。
本物かどうか調べてもらうため、
鎌倉の片隅にある古本屋「ビブリア古書堂」へ持っていく。
本物のサインかどうか調べてもらうはずが、
豊富な古書の知識と抜群の推理力を持つ店長の栞子によって、
この本に隠された大輔の祖母の秘め事までもが解き明かされる。
感想
読みやすくて、面白かったです。
「鎌倉」「古書」「謎」が組み合わさった世界観にはとても没入感を感じ、
物語の世界にためらいなく飛び込めた、そんな作品でした。
本の中身の物語だけでなく、本を持っている人のその本にまつわる物語という着眼点が面白かったです。
それぞれの古書に愛着のある人たちが織りなす謎は、
「日常の謎」という要素に加えて、
時とともに持ち主が変わる「古書」というある種の歴史的要素があり、
この二つの要素が相乗効果をもたらしています。
また作中で扱われる古書は実在する本なので、
知っている人には親近感が持て、知らない人には興味が湧くところもポイントです。
項目別評価
ストーリー
物語(古書)を持つ人の物語というところが面白かったです。
その人がその本にどのような影響を受けたか、
よくも悪くも本が持ち手に影響を与えて、物語が織りなされているところがポイントです
キャラクター
ビブリア古書堂の店長「栞子」がすごくいいキャラクターになっていました。
極度の人見知りで普段はしどろもどろに喋るけど、古書に関することになると途端に饒舌になる。
このちょっとした二面性がキャラクターの魅力を引き出していました。
設定・世界観
片隅にひっそりとある古書店の雰囲気は本好きにはたまらないでしょう。
各話には実際にある本が作中に出てくるところも興味を引き立てられました。
読みやすさ
連作短編形式で構成されているので読みやすかたったです。
文章もスッキリしていて難解な言葉も出てこないのでスラスラ読めました。
イラスト
うず高く積まれた本に囲まれた中で、本をめくる栞子さんのイラストにはとても雰囲気がありました。
まとめ
「日常の謎」のようなジャンルのミステリーは個人的に好きなので
古書とその持ち手が織りなす「古書と秘密」の物語は私にはすごくはまりました。
ミステリーの中でも、人が死なない「日常の謎」のジャンルが好きな方にはぴったりな作品ではないでしょうか。
シリーズ続刊もまだまだあるようなので次巻も読んでみようと思います。
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