作品情報
タイトル:「恋文の技術」
著者 :「森見登美彦」
レーベル:「ポプラ文庫」
あらすじ
京都の大学院から、遠く離れた実験所に飛ばされた主人公・守田一郎
石川県の能登で一人寂しくクラゲの研究をする彼は
気晴らしに文通修行と称して
京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくるのだった。
京都の愉快な仲間たちとのくだらなく笑いに満ちた手紙のやりとり。
ヘタレ大学院生の純情炸裂。
森見節満載の書簡体小説。
オススメポイント
オススメポイントは大きく分けて4つ
- 登場人物が愉快で個性的
- 書簡体小説
- 章ごとに宛先が分けられている
- 失敗書簡集
登場人物が愉快で個性的
守田一郎が手紙を書くのは主に5人
恋のことになると暴走する大学院の友人(男)
研究に必要なパソコンと実験ノートを隠す厄介な大学院の先輩(女)
夏休みの自由研究に「ヨーグルトばくだん」の作り方を訊いてくる少年
本業そっちのけですぐ主人公に手紙を書く偏屈作家
手紙の裏に督促状をかく妹
凄い曲者ばかりで読んでいて面白いです。
書簡体小説
手紙のやり取りで構成された小説を「書簡体小説」と言います。
手紙形式の小説なので手紙を読む感覚で小説を読むことができます。
特に本作は基本的に主人公が書いた手紙のみで構成されているので、
混乱せず読みやすい書簡体小説となっているのです。
章ごとに宛先が分かれている
1章は友人宛、2章は先輩宛て、というように手紙の宛先が
章ごとに分かれているので混乱することなく読めます。
失敗書簡集
主人公は好きな人に自分の想いを手紙で伝えるため、
恋文の技術を獲得するべく京都に住む知り合いに手紙をたくさん書いているのですが、
いざ好きな人への手紙を書いてみると、暴走したり、脱線したりと思うように書けないのです。
その暴走・脱線・失敗した手紙を自己分析する章がすごく面白いのです。
魅力的要素
魅力的要素をピックアップし、どのようなバランスで構成されているかまとめてみました。
![](https://aozblog.com/wp-content/uploads/2022/02/koibumi-1-1024x612.png)
読みやすさとキャラクターが非常に魅力的です。
まとめ
手紙のやりとりで構成される書簡体小説は
物語を読むというよりは手紙を読むという感覚に近く
その手紙を読むと自然と物語が浮かんでくる不思議な小説です。
基本的にほぼ主人公・守田一郎の手紙だけが書かれており、
かつ、章ごとに宛先が分かれているので、混乱することなく非常に読みやすいです。
しかし、主人公側からの手紙だけしか書かれてないのに物語として成立するの?
と思う方もいるかと思いますが、心配いりません。
不思議なことに相手がどんなことを言っているのか主人公の手紙から読み取れるのです。
なのできちんと物語として成立しているのです。
むしろ混乱することなく読みやすくさえなっているのです。
とても面白くて読みやすい小説です。
普通の小説を読むのがちょっと苦手という方にオススメです。
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