今回レビューするのは東野圭吾の「秘密」です。
本作は1999年に「日本推理作家協会賞」を受賞した作品で、
同年に映画化、2010年にはテレビドラマ化もされた小説です。
作品情報
タイトル :「秘密」
著者 :「東野圭吾」
挿画/装丁 :「影山徹/石崎健太郎」
レーベル :「文春文庫」
あらすじ
親戚の葬儀のため実家に帰る途中の妻・直子と娘・藻奈美。二人が乗ったスキーバスが崖から転落した。
自宅にいた夫・平介は突然の知らせに急いで搬送先の病院に駆けつけるも
妻・直子は亡くなってしまう。娘の藻奈美は一命をとりとめ意識を取り戻すが、
目覚めた彼女の体に宿っていたのは、死んだはずの直子だった。
その日から、平介と心は直子で体は藻奈美という不思議な体になってしまった娘の2人での奇妙な秘密を抱えた生活が始まることになる。
感想
奇妙な関係性の家族の動揺や嫉妬といった心の揺れが明瞭に描かれていたので感情移入して読めました。
周りには理解してもらえない秘密、夫・平介には理解してもらえない直子(藻奈美)の秘密、事故を起こしたバスの運転手の家族の秘密、
こういった複数の『秘密』が織りなす切ない愛の物語でした。
最愛の人が奪い去られてしまう切なさに胸が締め付けられました。
終盤の展開には胸にグッとくるものがあり、ラストのページではこらえ切れず涙をポロポロと流してしまいました。
さらに読み方によっては、妻と娘の「入れ替わり」について、複数の解釈をすることができ、再読することによりさらに物語が深くなる小説でした。
項目別評価
予想ができそうで、できないストーリー展開にはページをめくる手が止まりませんでした。
生きている娘と死んでいる妻の心が入れ替わっている設定が、物語に深みを出し、味わい深くなることによって、物語の世界にグッと引き込まれました。
また、平介や直子(藻奈美)の心の揺れが絶妙に描かれているのでとても感情移入しやすく物語への没入感がすごくありました。
さらに、表紙のイラストにもとても味があります。
娘・藻奈美の勉強机に物語のキーとなるぬいぐるみが置いてあり、写真を破ったようにちょうどぬいぐるみの足と影だけが残った構図になっています。
本作を読んだ後に改めて表紙を見ると色々と考察できるところがすごく魅力的です。
まとめ
とても読みやすく一気に読めてしまいました。
家族愛、夫婦愛、とても切ない愛の物語で、
久しぶりに読書で涙を流してしまいました。
いつか、この作品について考察なんかもしていきたいなと思っております。
コメント